戦後日本を代表する経営者、松下幸之助はこんな言葉を残しています。
「経理というものは単に“会社の会計係”ではなく、企業経営全体の羅針盤の役割を果たす、いわゆる“経営者”でなくてはならない」
「経理」とは「経営管理」のことであるといい換えて良いでしょう。適切な経理業務が行えるということは、適切な会社経営が行えるということです。
「経営成績」と「財政状態」を知り、将来への対策を考えなければ、会社の経営は改善できません。そしてこの二つを把握するためには経理が必要不可欠なのです。
経営者の中には「経理は後回し、とにかく営業第一」という方や「製造・開発で目一杯、経理に人を雇う余裕なんかない」という方も多いようです。“経理をやらなくともそれなりに会社は動く”という考えが背景にあるのでしょう。しかし本来、経理は会社の中枢でなくてはなりません。経理は会社の運命を担う場所、経理に手を抜くことで会社という生き物にいつ「死」という現実が突きつけられるとも限らないのです。
自社を見つめ直して栄ある未来を手にするためには、経営の中枢である経理処理をきちんと行い、正確な数値情報を得て、適切な対策を講じる他ないのです。
経理をきちんと行うと、当然のことながら会社経営を取り巻く数値がクリアに見えてきます。
毎月の会計状況をまとめれば、会社が今どのような経営状態にあるのかがわかります。収益もその都度わかるので、納税・節税対策が見えてきて、資金運用・投資のタイミングも逃さず捉えられるでしょう。
売掛金や買掛金の動きも一目瞭然。細かくチェックできるだけの詳細なデータがあるので、回収漏れなども起こりません。会社のお金の動きが目に見えるようになり、将来を見据えた資金繰りがしっかりと把握できます。
経理をおろそかにするとどうなるのか、順を追ってみてみましょう。
経理処理がきちんと行われていない会社では“どれくらい儲かっているのか”という見当がつきません。儲けがわからなければ節税対策は考えられないでしょう。税務署にいわれるがままの“なんとなく”の納税が続きます。
そしてきちんとしていないということは些細な変化に気づかないということ。儲けがわからないその隙を狙った横領や横流しが起きるかもしれません。いつの間にかお金や商品がなくなっても誰もわからないのです。「うちの会社の経理は甘い」という意識が広がり、しまいには多額の持ち逃げという最悪の事態が発生してしまうかもしれません。
社内だけでなく取引先などとのお金の動きが把握できていなければ、売掛金の受け取り漏れで損をしたり、買掛金の支払い漏れで信用をなくしたり、と対外的な大問題にもなりかねないのです。
次第に会社の経営状態が悪くなってきても、きちんと経理がされていなければどのくらいの損失が出ているかすらはっきりしません。どこに無駄があるのかわからず経費削減や経営改善対策の見当すらつかなくなります。今後資金繰りをどうすればいいのかも見えてこないのです。こうなったら致命的です。
いい加減な財務諸表しかできず、銀行や信用調査会社からの評価も低くなり、融資も思うように受けられなくなります。また税務調査では厳しく指摘され、解明のために日数がかかり、多額な税金を追徴されるように…。経理をおろそかにすると、このような「負の連鎖」が起こり得るということをぜひ覚えておいてください。
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